昨年、『セブンティーン』(集英社)を抜いてティーンズ誌販売部数1位となった『ニコラ』(新潮社)。“出版不況”と言われ、競合誌が軒並み部数減・廃刊となるなか、ひとり絶好調なのはなぜなのか?
⇒【写真】ニコラのイベントは定期的に開催される
◆圧倒的部数を誇っていた『セブンティーン』を抜き、ティーンズ誌1位に
NHKの朝ドラ『半分、青い。』で主演を務める永野芽郁さんの、天真爛漫な演技が評判だ。主人公と張り合う古畑星夏さんの役どころも、視聴者をハラハラさせる。実は二人とも、何年も前から雑誌モデルとして活躍していたのだ。
その雑誌とは、中学生を対象とするティーンズ向け女性誌『ニコラ』。これまでも、新垣結衣、岡本玲、西内まりや、池田エライザ、沢尻エリカ、川口春奈、松井愛莉、藤田ニコル、飯豊まりえ、清原果耶(以上、敬称略)など、有名女優・タレントを多数輩出している。
『週刊新潮』の創刊に携わり、新潮社のカラーを体現していた名編集者、故・斎藤十一氏の「女・子供には手を出すな」という“遺訓”を破り、『ニコラ』は1997年に発刊した。
創刊以来、販売部数は15万~20万部の間で安定。競合誌の『ピチレモン』(学研プラス)などが休刊、以前は30万部近くを誇っていた『セブンティーン』や『ポップティーン』(角川春樹事務所)など競合誌が失速するなか、斜陽と言われる雑誌市場で好調さを維持する希有な存在だ。現在、「妹雑誌の『ニコ☆プチ』と合わせて、小中学生市場をほぼ掌握した」(新潮社幹部社員)というほど、盤石な地位を築いている。
◆毎年1万人以上の応募者から4~6人が選ばれる、「ニコモ」の狭き門
出版販売会社関係者は、「ティーンズ誌の場合、以前から強力なモデルがいることで部数が伸びると言われてきました。『ニコラ』はその点で、特に強みを発揮しているのではないでしょうか」と分析する。
そのモデルたちの魅力を引き出して『ニコラ』の快進撃を牽引しているのは、小島知夏(こじま・ともか)編集長。14年間同誌を作り続けてき小島さんが編集長として最初に手がけた2017年9月号は実売86%を記録。今年2月号は90%を超え、ほぼ完売状態となった。雑誌の平均実売率が6割前後というなか、驚異の数字だ。
「自分たちの感覚だけで雑誌をつくると、読者とのズレが出てきます。ニコモ(『ニコラ』ではモデルをこう呼ぶ。「モ」は丸囲み)に私物を見せてもらったり、毎月開いている読者イベント『ミニミニ開放日』の参加者に話を聞いたり、中学生が何を考えているかを徹底的にリサーチしているんです」(小島編集長)
ニコモは、編集部主催のオーディションで発掘する。応募できるのはまったくの新人だけ。毎年、オーディションに受かった4~6人が芸能事務所に所属して誌面で活動する形になる。2017年は、雑誌の実売部数の1割に相当する1万4734人が応募した。
「素朴な田舎の子が、『「ニコラ」でかわいい洋服を着たい』と畑の真ん中で写真を撮って送ってきてくれたなんてこともよくあります。私たちがオーディションで見ているのは、写真写りがいいことももちろん重要な要素なんですが、『親しみやすさ』も大事だと考えています。同じクラスにいる女の子たちが、友達になりたいと思うような」
小島編集長がいちばん印象に残っているニコモは、女優の西内まりやさんだと言う。
「まりやちゃんは、本当にいい子でした。他人に気を遣って雰囲気を良くしつつ、真面目に仕事に向き合ってくれる。あの子がいるだけで、現場がピシッとするんです。本当にいい空気をつくってくれるモデルさんでした」
かつてニコモとして活躍した女優の川口春奈さんは、長崎県の五島列島から週末に上京し、朝から夜まで目いっぱい撮影して地元に帰るという、ハードスケジュールをこなしていたという。学業に支障がないよう、撮影は土日を中心に行われる。小島さんを含む編集部員8人は全員女性で、スタッフなども信頼できる人に頼んでいるので、中高生女子を預ける親からの信頼も厚いようだ。
見た目だけではなく内面の魅力も引き出し、プロ意識も植えつける。さらには「仲の良い友達」感覚の強力な女性ファンがつく。こういった点が、人気の女優やタレントを多数輩出し、多数の読者から支持を受ける秘密なのかもしれない。
※『週刊SPA!』6/26発売号「雑誌『ニコラ』が絶好調なワケ」より